日本では例年10人前後がマムシに噛まれて命を落とします。命を落とさなくても、後遺症が残る方はもっと多くいます。 噛まれた時から病院に着くまでに適切な応急処置をしないために起こる合併症が原因であることが多いです。 この記事でぜひ毒ヘビに噛まれた時にやってはいけないこと5つ是非覚えてください!


やってはいけないこと5つ



1. 止血帯を使って止血はダメ!

映画とかテレビを見ているとこの処置なんか見たことあるな、と思う方いるかもしれません。 毒を体の他の部位に巡らせないために、その部位のちょっと上の方を止血したらいいだろうという考えたくなるのはよく分かります。    そしてちょっと前の応急処置マニュアルにも止血するように指示するものもあります。昔からアウトドアをやっている人はこのやり方をいまだに実践しているかもしれません。 この処置の問題点は、腫れを悪化させる点です。噛まれたらその部位が腫れますが、止血することで風船のように膨らみ、強い痛みを引き起こします。 さらに、病院での四肢の切断の可能性がかなり高まります。 近年、毒ヘビ噛まれの専門家(本当にいます)は完全に止血するのではなく、包帯等できつく巻いて血液の巡りを遅らせるのがベストという見解を示しています。



2. 傷口を圧迫するのも絶対にダメ!

ハブやマムシは出血毒をもつクサリヘビ科で、出血毒は組織を壊死させ、体内出血を引き起こします。傷口をガーゼなどの上から圧迫すると、細胞の壊死による身体へのダメージが悪化します。もう一つはコンパートメント症候群という症状を引き起こす可能性があります。筋組織に過度の圧力をかけることによってその周りにさらなる腫れや循環障害が起こることです。結果として組織の壊死に繋がってしまいます。傷口は優しく扱いましょう。



3. 毒を吸い出す機器の使用はダメ!

多くの研究によってこの毒を吸い出す機器の効果がないことが証明されています。 ハブやマムシの牙は鋭く、奥深くに毒を注入する構造になっているので一回体内に入った毒を吸い出すことは不可能に近いです。 万一吸い出せたとしても、事態を好転させるほどの意味はありません。むしろ、吸い出そうとするときの力で傷口近くの組織に余計なダメージを与えてしまいます。 出血毒によってすでに組織が破壊されているところに追い討ちをかけるようなものです。 ではどうすればいいでしょう?研究では、毒を吸い出すことは生存率を上げることには繋がらないことが証明されています。 その代わりに、傷口を強く圧迫し過ぎない程度に水でよく洗い流す方が効果的とのことです。



もう一つ!口で毒を吸い出すのも絶対にダメです!

口に入った毒は口内で体に吸収されてしまうので、吐き出したとしてもすでに吸収されてしまった後です。



4. イブプロフェン、アスピリン、非ステロイド性抗炎症薬などの痛み止めは絶対に服用しない!

噛まれた時に痛みはあるでしょう。しかし非ステロイド性抗炎は血液の濃度を下げます。出血毒による主な死因は体内出血です。 体内出血で血が足りないのに薬で薄めてしまうことは自殺行為です。痛み止めがどうしても必要な場合、アセトアミノフェンが有効成分となっているものを服用するといいでしょう。



5. ヘビに手を出すのは絶対にダメ!

噛まれた時にそのヘビを殺したり、証明のために病院に持っていく意味は全くありません。さらに噛まれるリスクを自ら取りに行くようなものです。 ヘビはその地域の生態系にとって欠かせない存在です。あなたが登山する権利もありますが、ヘビにもそこに住む重要な意味があります。 人間よりヘビの方が生態系に貢献している点では、その山ではあなたよりヘビの方が偉いです。 もし病院でどんなヘビに噛まれたのか説明したい場合、2メートル以上離れた安全圏から写真を撮るだけにしてください。



じゃあ、どうするのが正解?



1. 静かに、ゆっくり、ヘビから距離をとる。



2. 腫れが出てきたら、血液の流れを阻害するような腕時計やアクセサリーを全て外す。



3. 油性ペンで、噛まれた時間を肌に直に書き込む。



4. 顔や喉が腫れてきた場合、エピペンを使ってアナフィラキシーショック(抗体の過剰反応による腫れやショック)を防ぐ。

エピペンがない場合、抗ヒスタミン剤を飲んで悪化しないように祈るしかないです。 (エピペンは即効性がありますが、20分程度で効果が切れます。しかし抗ヒスタミン剤は即効性がないものの長く作用します。エピペンを打った瞬間に抗ヒスタミン剤を服用して、エピペンの効果が切れる頃に抗ヒスタミン剤が効いてくるようにするのがベストです。抗ヒスタミン剤単体では効果が出る前に命を落とす可能性がありますし、単体ではエピペンほど効果がないのが実際のところです。)



5. その後は2つの処置のうちどちらかを選択してください。



処置A) 安全な場所に移動して、座って助けを呼ぶ

心拍数を下げるために息を大きく、ゆっくり吸って吐いてください。また、患部を心臓より下げてください。 油性マーカーを使って、肌の上に30分ごとに腫れが広がった地点まで線を引いてその時間を書きます。これは病院に着いた時に医者の処置判断に役立ちます。



処置B) 下山しながら助けを呼ぶ

処置Aのように心拍数を下げて助けを待つのか、自分でレスキュー隊や病院などに向かうのかは議論が分かれるところです。後者の意見としては、普通の人なら毒ヘビに噛まれてパニックになるので心拍数を落ち着いて意識的に下げるのはどうせ難しいのだから、一定のペースを保ちつつ救助してもらえる人や施設に向かう方がいいのではないかということです。また場所によっては救助やヘリは来るのにかなりの時間がかかるためです。 夜の時間帯や気候によっては体を動かさず一つの場所にとどまると低体温症になるリスクも考えられます。 また山岳レスキューには莫大な費用が掛かりますから、保険に入っていない方はこっちの方が良いかもしれません。



ここでポジティブな情報も知っておきましょう

実はハブ、マムシ、ヤマカガシの毒で24時間以内に命を落とした人は記録を見る限りではいません!3時間以内に血清を投与した場合効果が出る確率が上がると言われてきました。 山を降りて血清を投与できるまで絶対に3時間以上かかる場合でも諦めないでください。'Acute Medicine & Surgery' (2020)という最近の研究論文によると、血清の投与のタイムリミットはおそらく14時間であるという理論が提唱されています。 とはいえ、なるべく早く医療機関にたどり着くに越したことはないので、リミットや自分の体の状態を考慮してベストな選択をとりましょう。





日本に生息する代表的な毒ヘビの種類



マムシ

見た目: 薄い茶、濃い茶に濃い色に縁取られた斑点がある。

種類:クサリヘビ科

体長: 40~80cm

毒性: 出血毒 (高濃度)/神経毒 (低濃度)

症状: 腫れ、傷口近くの出血、低血圧症、視覚への斜視のような症状、ひどい場合は吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、酸素欠乏症、頻脈症


マムシは夜行性で夏の間活発になります。ハイカーの皆さんは日の出を見に暗い間や早朝に登山する時は注意が必要です。マムシは濡れていて、草が茂っている場所を好みます。 米農家がマムシ被害の非常に大きな割合を占めているのはこのためです。山では、落ち葉が重なっている場所や足元に草が生えている場所、川が流れている近くで隠れている時に遭遇することが多いです。このことにより、昼間でもマムシに噛まれたということを特定するのが難しいケースが多いようです。 マムシはジャンプすることができないため、知らずに足を近くについてしまった時、触ろうとした時にしか噛まれません。 70%のマムシ被害はマムシがびっくりして噛むことによって起こるようです。 牙は5ミリ程度の長さでとても細く、噛まれた瞬間の痛みはトゲが刺さった時のようなものです。 そのため、噛まれた人や医者でもマムシの咬み傷を虫刺されなどと勘違いしてしまうケースが多いようです。 見分け方としては、マムシの場合は小さな傷が一センチ間隔で一対できます。また2対の牙がある場合もあるのでその場合は2対の咬み傷ができることになります。



ハブ

見た目:薄いオリーブ色か茶色に緑色や茶色の斑点

種類: クサリヘビ科

体長: 120~150cm

毒性: 出血毒

症状: 腫れ(多くは30分以内に発症), 吐き気, 嘔吐, 低血圧症


ハブは沖縄や南西の島々に生息しています。羽生と同じ夜行性で、暖かく、湿気のある時期に活動が活発になります。被害に遭う大多数の方は農家です。20%のハブの咬み傷には毒がありませんが、噛まれたら必ず医療機関でチェックしましょう。



ヤマカガシ

見た目: オリーブ色〜暗めの緑色がお腹側の色。黒に明るいオレンジの斑点や線が頭から体の3分の1くらいまである。

種類: コブラ科 / クサリヘビ科

体長: 60~100cm

毒性: 神経毒

症状: 傷口からの大量の出血, 鼻や歯茎からの出血



ヤマカガシはタイガースネークとしても知られ、北海道、南西諸島、小笠原諸島以外の日本全域に生息。牙は2ミリ程度と短く、攻撃性が低く、遭遇しても逃げようとすることがほとんど。このことからヤマカガシによる被害はかなり珍しい。しかし噛まれた場合はその神経毒により生命の危機に直結するため注意が必要。




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ラナ 

Hike To The Clouds創設者。ハイキングをしていない時は、コーディング、料理、愛猫のベンジーとレイアと遊ぶのが大好き。

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